◆イヤな虫の話

 虫とは本来、脚が6本あるものを言うであって、それより多くても少なくても正確には虫(昆虫)とは言いません。もっとも脚2本の“ムシ”にもろくなものはおりませんが・・・
 
 【第一話】
 2002年シーズンの6月第2週の週末も当然のことながらフィールドへ出ていたわけですが、翌月曜日いつものように酔っ払って帰宅した夜、パソコンに向かっていたところどうも足のつま先辺りが痒くてしかたがありません。見れば右足第2指の根もとにカサブタのようなものがありました。「おかしいな〜、こんなところに切り傷・擦り傷なんかなかったのにな〜」面倒くさい!エイっと引っ剥がしてやりました。
 取れたカサブタをよーく見れば、な・な・なんとダニなのです!!昔、犬っコロを飼っていたとき首輪の下によく付いていた例のヤツでした。生意気にも私めの大事な血を吸いやがって!(あんまり吸うと私の高血圧がうつるぞ!)と、ダニをつぶすときの標準スタイル、親指の爪を背あわせにしてブチっと、体液が飛び散るのも構わず勢いよくつぶしてやりました。ざま〜みろ!
 でも話はこれだけで終わりませんでした。このあと38日間やられたところが疼(うず)く状態が続きました。そのあと半年経っても違和感が残ったのでありました。家の中でダニにやられた!なんて家内に知れたらウダウダうるさいことになるので、そっと胸にしまっておいたのは言うまでもありません。

 【第二話】
 チョウが多い季節・場所・時間というのは当然他の虫も多いわけでして、フィールドへ出るということは私を狙って集まってくる虫たちとの戦いでもあります。蚊(カ)や蚋(ブヨ)などはごく一般的で、こんなヤツらにやられたとしても日頃体内で培っている免疫で難なく対処できます。これが虻(アブ)になるとちょっと厄介になります。スズメバチのような大きな赤いアブは大したことはありません。動きがトロいのでまずやられることはありません。問題なのは灰色の小さな蝿(ハエ)のようなアブです。すばしっこく動きが速いのでまず目で追うことは不可能です。で、ちょっと油断するとものの見事にやられてしまいます。かまれたときの痛さより翌日から始まる痒さに悩まされること請けあいです。例えば、8月の第一週の蒸し暑いカンカン照りの日、但馬山中に分け入るとどうなるか?車を降りて勢い勇んで歩き出すと10分もしないうちに10頭以上のアブにまとわりつかれることになります。私の過去の経験では約100頭に囲まれたことがあります。遠くからみれば私の周囲半径2Mに雲か霞がかかり、カメラで撮れば立派な心霊写真になったことでしょう。いずれにしてもここでパニくってはいけません。網を持っているならチョウ採集ではなくアブ退治から使用いたしましょう。ひとまず休憩し、呼吸を整え、二酸化炭素の排出量を抑え(?京都議定書?)、体温の上昇を抑えると集まってくるアブの数は減ってくるはずですので覚えておいてください。もちろん長袖、長ズボンが基本スタイルであることは言うまでもありません。

 【第三話】
 最後にもうひとつ。漢字では虫偏なのに昆虫とは似ても似つかぬ不気味な容姿、「自然界は調和で成り立っている、存在が無意味な生物はいない」と日頃から理解実感している純粋ナチュラリストである私でさえもコイツだけは許せない!この世から抹殺しても問題ないのではないか!これが蛭(ヒル)なのです。鈴鹿でキリシマを狙うのであれば注意すべきはコイツです。
 前夜の夕立がうそのように晴れた朝、風は無く、気温はグングン上昇、あっと言う間に30℃それでもって湿度は90%、朝もやがまだ残る渓谷底の踏み分け道を歩く、というシチュエーション。立ち止まりふと足元を見ると、靴やズボンのすそにすがりつきシャクトリムシ(シャクガの幼虫)のような動きをする3,4cmの細いナメクジのような物体、これが鈴鹿名物のヤマビルです。 
 更に具体的にご説明いたします。一連の悲劇はヒルがズボンの内側に回りこみ靴下の上に上がったときから始まります。まずどうなるか?ズボンに血がにじんできます。怪我した覚えはないし、痛くも何ともないのに突然、血がにじんでくるのです。その次どうなるか?ズボンの裾をまくってみると、体の半分だけ残し、あと半分毛穴のなかにしっかり食い込んでいる憎っきヒルの姿が目に飛び込んできます。くどいようですがまったく痛みも痒みもありません。私の場合、この光景に出合うと怒りで気が狂いそうになります。ヤツがちょん切れないようそっとつまみ、毛穴から引っ張り出し思いっきり踏み潰してやることにしています。ではその後どうなるか?血が止まらない!私の血小板はどこへいったんや?敵もさるもの血が固まらないような化学物質を分泌しているらしく、まず数時間は止まりません。ここで焦ってはいけません。見る見るうちにズボンが血で染まっていきますが、けっして出血多量で死ぬことはありませんのでパニックにならず、血の広がりを楽しむくらい余裕を持つように心掛けましょう。バンドエイドの持ち合わせがなければ、ヨモギやイタドリなどの葉をすりつぶし傷口にすり込むといくらか止血効果が現れます。最後にどうなるか?翌日から3日3晩猛烈な痒みに耐え抜かなければなりません。何が辛いといってもこれが一番辛い!インキンタムシでもこうは痒くない!(失礼、表現が下品でした)

この他にもマムシ、ムカデ、スズメバチ、イラムシなど、フィールドで出合うちょっとアブナイ仲間たち、彼らの話は別の機会といたしましょう。


こぼれ話の目次に戻る

TOPに戻る