◆海外遠征 行動レポート

2024.5.21~29 台湾


5/21(曇り時々雨)

本日から5/29までの9日間、チョウ撮影目的としては初めての海外遠征となる台湾を訪ねる。時期的には梅雨の真っ最中であり、天候的には恵まれないことを覚悟しつつ、今回の遠征メンバー3名の合意のもと、この時期の遠征が決定した。埼玉からの友人2名と台北市内のホテルでの合流のため、とにかく一人で集合場所まで行かなければならない。これがうまくいかないとすべてが始まらない。一抹の不安を胸に、関西空港から定刻通り7:50に離陸する。ここのところの睡眠不足を解消すべく、深い眠りにつきたいところだったが、横に座った老夫婦のうち奥さんのうるさいこと甚だしく、眠ろうとしているのにすぐ起こされてしまう。大阪のおばちゃんのキンキン声で横に座っている旦那を何かにつけてなじる。なじる内容を聞くのも聞くに堪えない不快極まりないもので、聞かされているこちらまで気分が滅入ってしまう。(*台湾到着後、ご夫婦のお顔を拝見すれば、奥様は小生より若くかつ、結構な美人で驚いた!)着陸のため高度を下げると、やはりと言うか、予想通りと言うか、眼下は雨に煙っていた。

 定刻の10:00、雨の台湾桃園空港到着、日本との時差マイナス1時間。入国審査後、SIMカードを入替え、台湾観光当局の優待電子くじ引き(*見事に外れ)を行い、ユーユーカードを購入(日本でいえばスイカやイコカのようなカード、各種交通機関やコンビニで使用できる。日本のスイカのように購入に際してややこしくなく、簡単に購入できるスグレモノ)、と決められた諸手続きをこなす。通貨両替は関西空港で済ませておいたのだが、結果的にこれは大失敗!現地での交換レートの方が有利であり、はなはだ不利だった関西空港の交換レートはいったい何だったのか?にわかに信じられないほどの差があり、金銭的にはのっけから大損スタートとなった。教訓:通貨両替は現地で行うこと

台湾が誇る都市交通MRT(日本の地下鉄みたいなもの)に乗車すべくプラットホーム(月台と表記します)で列車を待っていたところ、ホームに列車が到着しても誰も乗らない。なぜ??不審に感じながら乗り込み、数駅進んだところでその理由が判明した。台湾地下鉄には普通と快速があったのだ!快速に乗り換え約30分後に台北に到着。流れている空気が日本とは異なる。あとから聞けば、何かにつけて多用するハッカクと呼ばれる香辛料の匂いとのこと。逆に言えば、日本はどこへ行っても無味無臭の空気が流れていることになる。地下鉄のコンコースにある地図でホテルの位置を確認していたところ、“お困りですか?”(*もちろん英語で)と若い男性から声を掛けられる。2人で地図を前にして、一番近い出口を確認する。なかなか親切なお国柄だ!雨の中をトボトボ歩き、無事ホテル到着。さっそくチェックインを試みるも“あなたの名前は見当たりません”、当方“・・・”すったもんだしているうちに、友人が3人分まとめて予約しており代表者しか表記がなかったことが判明。まだ正午前にもかかわらず部屋を使わせてくれた。ラッキー!

1時間後に友人たちも到着。合議ののち今日の残りの時間は動物園での撮影に決定する。動物園とは言っても、動物だけでなく、昆虫観察園や深い森の中の遊歩道もあり、ここは隠れたチョウの撮影ポイントらしい。再びMRTを乗り継ぎ動物園に到着。幸いにも雨は止んでいる。小生、用足しをしている間、外を眺めていた友人達が何やら大騒ぎ!“ゼフがいる”“緑色が見えた”“2頭いる”“テリを張っている”などなど。一瞬のことだったらしく、小生も探したが確認できなかった。こんなところにゼフがいるなら、動物園内にも絶対にいるはずと動物園へ急ぐ。薄暗い遊歩道の植え込みの中に小さなジャノメを発見。ヒメウラナミジャノメに似てはいるものの明らかに眼状紋が異なっている。なまいきにも人の気配に敏感で容易に近寄れない。ゲットウの花で蜜を吸うルリモンジャノメ2頭を見る。クワズイモの葉に上で何やらストローを伸ばしていたのはコノハチョウ。翅裏は沖縄本島や八重山でみるタイプと違っているように思ったが、友人は“個体変異の範囲内”の一言で片づけた。明るい遊歩道で、リュウキュウムラサキ、クロタテハモドキ、タイワンキチョウ(ミナミキチョウ?)を見る。樹冠を高速で飛ぶのはウスキシロチョウか?湿地に咲く白い花に無数とも思えるマダラが群れている。ツマムラサキマダラ、マルバネルリマダラ、ホリシャルリマダラ(=マサキルリマダラ)、リュウキュウアサギマダラ、ウスコモンマダラ、コモンマダラ、ヒメアサギマダラ、カバマダラ、スジグロカバマダラ、オオカバマダラ、までは確実に同定できたが、ルリマダラが混じっていたかどうかは自信が持てない。遊歩道を奥に進むにつれ、否が応でもこれからの出遭いに期待が高まる。薄暗い森の中をちらちら飛ぶのはイカリモンガ。日本に産するものと同一かどうかは不明。路上に落ちた白い鳥糞にチョウが集まっている。ルリシジミ(?)、イシガケチョウと初めて見るナカグロミスジ。後翅下部の白紋列がリング状に連なり、なかなか格好良い!さらに出遭いが続く。薄暗い箇所のミョウガのような葉にとまる暗色のシジミを見る(宿に帰り図鑑で調べたところ、ミツオシジミの判明、ただし本来ある尾状突起6本のうち、残っていたのは50%残が2本のみ)。各所で活動しているのはホソバセセリ。足元をちらちら飛ぶ極小シジミはヒメウラボシシジミか?オレンジ色の小さなセセリも止まらないため同定できず。

昆虫園の温室の中でウラキマダラヒカゲ、ナガサキアゲハ、オオゴマダラを見る。温室の出口に現れたセセリはオキナワビロウドセセリか?先刻から降り出した雨の中を撤収。ホテルに戻るMRT内で席を譲られるが、次の駅で降車することもあり、丁重にお断りする。ちなみに日本でこれまで電車の中で席を譲られた経験はありません!午後6時ホテル戻り。日本にいる友人とLINE-TELにて情報交換する予定があり、ホテルの隣のファミリーマートで夕食を調達する。値段の高さにびっくり仰天!一番安価な塩おにぎり250円、高級カップ麺400円、一番安価なフルボトルワイン1600円、菓子パン200円などなど、日本の1.5倍から2倍近い値段であった。缶ビール1本にちょっとしたつまみを付けたコンビニ夕食はだいたい2000円くらいかかりそうだ。教訓:台湾のコンビニはくそ高い!午後8時爆睡。

5/22(曇り時々雨)

7時半ホテル発、MRT(地下鉄)、LRTを乗り継いで、台北市郊外の新北市に向かう。地元のチョウ愛好家のご厚意で、ご自宅を含む広大な私有地を案内いただく。私有地のうちの一部分ではかつての台湾の原生植生を再現しているとのこと。まず気が付いたのはリュウキュウウラボシシジミ、薄暗い林内をあちこちでチラチラ飛んでいる。どこかにとまらないかと林内を追い駆けるが、なかなかとまらず、ずっと飛び続ける。じっと我慢の撮影が続く。次に現れたのがウラキマダラヒカゲ。残寝ながらややスレ個体だ。キレバヒトツメジャノメが後に続く。遠目にはヒメジャノメに似るが、それよりやや大きい。路上で吸水するオナシモンキアゲハを見る。見た目にモンキアゲハとは相当違う。ルリシジミがあちこちで集団吸水している。友人によれば、1種単独ではなく、ホリシャルリシジミ、タッパンルリシジミ、タイワンルリシジミの混成集団ではないかと見解であった。最大の“コロニー”は優に100頭以上か?一斉に舞い上がる瞬間の撮影を試みるが静止画撮影は失敗!動画撮影の方はまあまあうまくいった。薄暗い森の中からオレンジ色のチョウが飛び出す。ワモンチョウの仲間のシラホシヒメワモンだ。地元の愛好者に伺えば、もともと台湾に生息していたわけではなく、大陸から侵入した種らしい。いつ侵入したのかは聞きそびれる。あとで図鑑から分布状況を確認すれば、台北周辺しかいないようだ。このチョウ、前翅表先端部は鮮やかなオレンジ色、翅裏は前後翅とも一列に白紋がきれいに並んでいる。ジャノメチョウの仲間なので基本的に翅を閉じてとまり、たまに間欠開翅する。開翅する瞬間を狙って、三脚をセットし、蚊の攻撃に耐えながらその時を待つ。待つこと約10分、待った甲斐あって、翅表の撮影に見事成功!タイワンジャコウアゲハの産卵を見る。庭先の花壇に多くのマダラが群れている。リュウキュウアサギマダラ、ツマムラサキマダラ、ホリシャルリマダラ、ヒメアサギマダラがその構成種。ツマベニチョウが幾度となく視界を横切る。産卵樹が近くにあるようだ。高所を飛んでいくのはウスキシロチョウか?カワカミシロチョウか?森の中ではクロテンシロチョウ多い。さらにご厚意でキシタアゲハの幼虫、さなぎを見せていただく。どちらもびっくりするような巨大さだ。残念ながら、時期的に成虫の端境期に当たり、成虫を見ることは叶わず。ヒメフタオが吸水にやってきたが、近寄る前に飛び立たれ撮影は失敗。茂みの高所でキンミスジの活動を見る。ここでの撮影は午前中で終了、丁重にお礼を申し述べ失礼する。ここはチョウの種数、個体数とも多いが、当然のことながら蚊も多く、露出しているあらゆる個所を刺される。



LRT駅に向かう道すがら、先刻のキンミスジとは違う黄色のミスジに遭遇する。よく見れば後翅のとんがりのあるキミスジであった。コキマダラセセリに似た大型セセリを見るが、種名はわからず(調査の結果タケアカセセリのもよう)。リュウキュウムラサキは新鮮、テリを張る。センダングサで蜜を吸うオナシアゲハを見る。動きが早く、カメラを構える前に飛び去られる。手入れされた琉球竹の畑の地表近くを飛ぶリュウキュウムラサキのメスを見る。翅表の紋様は大陸型であった。モンシロチョウ、キタテハを見るが日本産との違いは感じられず。LRTMRT(地下鉄)を乗り継いで、昨日訪ねた動物園に向かう。空には黒雲が広がり、今にも雨が降り出しそう。

話はチョウと離れるが、MRTを乗降していて気が付いたのは、降りる人が残っていてもドアの横からどんどんとすり抜けるように乗り込んでくること、これは毎回例外なく状態化していた。さらにもう一話、若い女性にメガネの方が多いこと。日本なら相当数コンタクトレンズを使用しているものと思われるが、こちらではすべてメガネにしている感じ。それも日本ではまず見かけることがないレンズ自体が大きいやつ、いわゆるトンボメガネである。さらにさらに、若い女性にへそ出し+タイツ姿が多い。気温が高く蒸し暑い気候からそうなるのかもしれないが、MRT一車両に34人は乗っているような多さだ。話をもとへ戻す。

午後2時動物園着。 依然として空は暗く、活動しているチョウは少ない。しかし昨日マダラが群れていた湿地は今日も状況は変わらず活況を呈している。ボロのツマムラサキマダラはスルーして、コモンマダラ、ウスコモンマダラ、ホリシャルリマダラを対象に動画撮影に集中する。これだけの数がいても求愛行動を示す個体はいない。同じ花で蜜を吸うコノハチョウを見る。本種も訪花吸蜜するのかと驚く。池の周辺のゲットウの葉にとまるオオシロモンセセリを見る。日本ではあまり見かけないトンボも多いが、チョウ撮影に手いっぱいでトンボ撮影まで手が回らない。薄暗い森の中をチラチラ飛ぶのはヒメウラボシシジミか?止まることがないため同定できず。立ち入り禁止エリアの一角の樹冠を何かが高速で飛び回っている。個体の大きさと言い、飛翔速度と言い、ゼフっぽいが、トラフシジミの仲間かもしれず、確認できない。午後3時撤収、ホテル帰還は午後4時。明日の作戦会議のため、ホテル近くの食堂を探すがなかなか見つからない。やむなく入ったのは食堂ではなく、総菜屋、しかもベジタリアン専門店とのこと。選んだ食材に関係なく、チョイスした総重量によって金額を決めるシステム。ちなみに紙トレイ山盛りのおかずで700円であった。コンビニだけがやけに高いのかもしれない。今日も夜8時就寝。

5/23(くもり)

タクシーを丸一日チャーターし、桃園市東部の山岳地帯へ遠征する。料金は午前6時半から午後4時までで7300台湾元、日本円では約4万円なり。30分高速道路を走った後、下道へ。一時間走れば本格的な山道走行となる。一応国道のようではあるが、車のすれ違いも難しい細い道と急カーブが続く。2時間半後、巴陵近くの目的地の林道入口に到着。

ここからは歩きだ。急坂の竹林を抜けると水平道に変わり、小さな沢をまたぐ明るいカーブごとに何かが出てきそうな予感がする。この日の本格的な撮影第一号となったのはウラフチベニシジミ。当地では普通種らしいが、図鑑通りの美麗種。しかも新鮮なオス、翅裏を撮影していると徐々に翅を開いてくれた。翅表は深い青藍色、息をのむような美しさに思わずため息が出る。角度を変え、距離を変え、納得するまで時間をかけて撮影する。次に現れたのはルリモンアゲハ、後翅にある大きな青緑紋が鮮やかではあるが、尾状突起は片方しかなく、翅全体がスレていた。その次に現れたのはミヤマフタオツバメ(ミツボシフタオツバメ)、本種は日本のキマダラルリツバメにそっくりだが、もちろんアリに育てられる種ではない。サイズも日本のキマちゃんより一回り大きい。明るい草地に咲くセンダングサで蜜を吸っていたのはタイワンモンシロチョウ、本種を撮影するため与那国島まで遠征したことが懐かしい。あれやこれや撮影し1時間が経過、そろそろ引き返し始めたところ、カメラを抱えて、短パン、半そでで若い男が上ってくる。聞けばシンガポールからやってきたとのこと、以前にこの林道の奥でタナカカラスシジミを撮影した、これから行くが一緒にどうだ?とのお誘い。この言葉に心を動かされ、せっかく降りてきた道を上り返す羽目に。残念ながら案内されたポイントには何もいなかった。シンガポールの若者に別れを告げ、また林道を下る。薄暗い場所が多いせいか、やたらジャノメの仲間が出てくる。巨大な白いジャノメチョウであるシロスジマダラ、クロコノマチョウ、シロオビクロヒカゲ、オオシロオビクロヒカゲ、キレバヒトツメジャノメ、メスチャヒカゲ、タイワンキマダラヒカゲ、何種になるのか全く分からないウラナミジャノメの仲間、特に奇麗だったのがタイワンクロヒカゲモドキだ。新鮮個体でかつ、翅裏に赤いダニを付けていた。いたるところに生えているヤナギの周辺を活発に飛んでいたのはホソチョウ、弱弱しい飛翔に思わず、“これはガか?”と見間違えてしまいそうになる。蜘蛛の巣にかかり哀れ絶命している個体も確認する。ヤブカラシの花で蜜を吸うミカドアゲハを見る。コンクリートの擁壁に張り出した枯れ枝にとまるゴイシツバメシジミを見る。日本では超希少種だけに思わず撮影に力が入る(後に聞けば、台湾ではそれほど珍しくないとのこと、当地の幼虫はカノコソウを食べるとのことであった)。林道の各種でキミスジを見るが、種による斑紋の違いが頭に入っていないため同定できず。オオキコモンセセリが飛び出し、すぐにクワズイモの葉の裏に張り付くようにとまる。ストロボを持っていなかったため、自然光のみでの撮影となり、露出設定に苦労する。アサギマダラの吸蜜を見る。タイワンアサギマダラを期待していただけに残念!各地でシロウラナミシジミが多い。「あれは何だ?」「シロウラナミじゃない?」「なーんだ、残念!」との会話が幾度となく繰り返される。正午過ぎ、タクシーを待たせている場所まで戻る。たぶん2kmくらいの林道の往復だったはずなのに思いのほか疲れる。舗装道沿いのセンダングサで蜜を吸うルリモンアゲハ、タイワンジャコウアゲハを見る。 撮影地を移動する。整備された公園の中にゼフの姿なし。代わって盛んにテリを張っていたのはアマミウラナミシジミ。駐車場の空き地のランタナで蜜を吸うワタナベアゲハを見る。残念ながらこのアゲハも破損していた。午後2時帰途に就く。今日初めて台湾の山間部に足を踏み入れたが、想像以上に谷が深いことに驚く。しかも谷底から谷の上部まで切れ目なく竹林が続いている箇所があり、決して日本ではお目に掛かれない光景だ。聞くところによれば、この谷底の硫黄分が染み出る箇所こそフトオアゲハが吸水にやってくるとのこと。まず谷底へ降りる道があるとも思えず、おいそれと撮影できる種ではないことを実感する。午後4時ホテル帰着、外は雨であった。

5/24(曇りのち雨)

午前中は台北市内での撮影を予定していたが、あいにく未明から雨が降り続いている。これからもずっと雨の予報だ。急遽、打合せ。午後からの移動を変更し、次の目的地である埔里へ。台湾が誇る新幹線「高鐡」に乗るべく駅に向かう。滅茶苦茶サービスが低下した最近の日本のJR各社に比べ、いとも簡単に切符を購入できた(ただし新幹線の切符はユーユーカードでは買えません)。台北から台中まで自由席で675元(日本円約3500円)、乗車時間は1時間ほど。台中駅からバスで埔里に向かう。こちらの乗車時間も1時間ほどだ。車窓から川沿いに切り立った崖が続く。ウトウトしているうちに9時半には埔里に着く。ホテルに荷物を預け、早々に郊外の撮影ポイントに向かう。ポイント着11時前。さっそく撮影を始める。農業用ビニールハウスのわきに空き地にセンダングサが咲き、小さなシジミが活動しているのが目に入る。近寄り撮影してみれば、すべてカクモンシジミだ。図鑑でしか見たことのない特徴ある翅裏の縞々模様に心が躍る。山裾の小道を進むとセンダングサの生える大きな草地で大型のシロチョウが吸蜜を繰り返している。遠目にもカザリシロチョウの仲間なのが分かる。こちらに向かって近寄ってくるチョウ、翅表は純白、翅裏は黄色のマダラシロチョウであった。サイズ感はタイワンモンシロチョウを二回り大きく、ツマベニチョウを二回り小さくした感じか。ワクワクしながら静止画、動画と時間をかけて撮影する。路上の水たまりで吸水していたのは、モンキアゲハ、ウスムラサキシロチョウ、ツマベニチョウ、それとメスシロキチョウ。メスシロキチョウはちょっとした理由により、個人的には思い入れの深いチョウ、今回の遠征でどうしても撮影したかったチョウのひとつだ。それが目の前を飛んでいる!さっそく撮影を試みたが、チョウ自体に落ち着きがなく、近寄れば飛び回るばかりで、一向に満足できる写真が撮れず極めて残念!日本では真夏に咲く白い花(植物名は調査中)にワタナベアゲハが蜜を吸う。昨日撮影した個体よりやや新鮮だが、背景に抜けがなく、うまく写せず。森と草地の境目の空間にリュウキュウムラサキが多い。明るい草地に多数舞っているキチョウはすべてホシボシキチョウだ。日本国内なら大騒ぎになるところだが、ここは台湾、よく調べていないが普通にいるのかもしれない。未舗装の道に落ちている何かの獣糞に何かタテハが来ているのが目に入る。そっと近寄れば新鮮なキゴマダラだ。ストローは淡い黄色、オレンジ色の斑紋も鮮やかで、翅表、翅裏ともたいへん美しい。時間をかけて100カット近く撮影する。先刻、ワタナベアゲハが来ていた花にメスシロキチョウがいる!背景が暗くなるカメラポジションを慎重に選び、連写する。何とか10カットほどうまく写ってくれた。前翅表先端にオレンジ紋を付けるタイワンイチモンジを初めてみたが、ぼろ個体なのであまり撮影意欲は湧かず。小雨が降り出した午後2時撤収。バス停でバスを待つが一向にやってこない。25分後にようやく乗り込めた。午後3時ホテル戻り。5時の夕食時に外は土砂降り、ホテルから歩いて50mのメシ屋で90元(日本円450円)の肉飯を注文、出てきたのは皿に載った白飯に肉がドーンと載っていた。見た目はそうでもないが、これがすこぶる美味!あっという間に平らげ一日が終了する。

今日の最後に一話。台湾では田舎へ行けば行くほど、鎖につながれていない犬がゴロゴロしている。さらに正確に記述すれば、鎖どころか首輪のない犬も多い。特に吠えられることもないのだが、近寄るのにはちょっと躊躇してしまう。逆に、民家の庭の奥につながれている犬はやたら吠え、閉口する。もっとも忠実に番犬の役割を果たしているのではあるが・・・。

5/25(くもり)

埔里滞在2日目。昨日とは異なるポイントに向かう予定だったが、明日の予定が変更になった余波を受けて、本日の行先も変更となる。合議の結果、昨日とおなじところでの撮影と相成った。昼食購入のため並んでいたバスターミナルの売店が思わぬ混雑!小生の前で買っていたオヤジが“あーでもない、こーでもない”と言い出し、挙句の果てに店番相手に世間話をはじめ、やたら時間がかかってしまった。やっとこさ昼食を買えたと思ったら、無情にもすでにバスは発車してしまっていた。次のバスは45分後、同行のメンバーに申し訳ないやら、情けないやら、本日のスタートから躓いてしまう。すったもんだの挙句昨日のポイントに着いたのは午前10時。気を取り直してセンダングサで蜜を吸うタイワンモンシロチョウから撮影を始める。その先のセンダングサの群落に何やら大きな白いチョウが活動している。そっと近寄れば、今回の台湾遠征の第一目的種であるベニモンシロチョウだ!それも2頭いる。翅表の白とグレー、翅裏の黄色と鮮やかなオレンジ色、とにかくゴージャスでたいへん美しい!人の気配を感じ取られ、飛び去られてしまわないよう細心の注意を払って移動、カメラポジションを変える。望み通り背景が抜けていて、しかも真っ暗!ここぞとばかりにシャッターを切る。時間にして1015分程度であったが、精神を集中して撮影することができ、至福の時を過ごすことができた。昨日撮影したカクモンシジミの枚数が不足気味だったので、今日もカクモン君にアタックする。しかし、なぜか今日はボロばかり。小さな水たまりに来ていたのはウスムラサキシロチョウとメスシロキチョウ。ブッシュと道の境界線で、ガにそっくりなユウマダラセセリを見る。残念!これもボロ。しかし初めて見る種なので、鮮度の悪さには目をつむり丁寧に撮影する。路上に集まり吸水している小さなシジミはヒメウラナミシジミのようだ。センダングサの花が密集している中で蜜を吸うぼっろぼろの大きめのシジミを発見、クリルシジミだと思うがあまりにも破損が激しく同定に自信がない。今日もセンダングサで蜜を吸うマダラシロチョウを見るが、昨日集中して撮影したため、今日は気分がのらない。ホシボシキチョウも多く、産卵シーンを目撃する。はるか遠くのヤナギの周辺を飛ぶヒョウモンを見るが、あまりに遠すぎて同定できず。別箇所でたまたま撮影した友人によれば、ウラベニヒョウモンとのこと。本日二度目のベニモンシロチョウを見つけるが、先刻出逢った個体ほどの鮮度がないため、数カット撮影してやめた。薄暗い小道の崖をゆるやかに飛ぶマダラを見る。母チョウが産卵する植物を見つける飛び方だ。よく見れば、腹部が紅色!タイワンアサギマダラ!本種の撮影のために二度も与那国島へ行ったのに、二度とも空振りに終わった因縁のチョウである。しかしとまることなく飛び続けているので飛翔シーンを狙うしかなくなる。頭上高く飛び去るまで、何とか30カット撮影するが、すべて失敗!いや失敗どころか完敗だ。残念なことこの上ない!自分の腕のなさ、運のなさ、自己嫌悪に陥る。民家の庭先のランタナにベニモンシロチョウを見る。今日三度目の出遭いだが、初回ほどの感激はない。このポイントで期待していたイナズマチョウには結局出遭えず。撮影地を大きく移動する。渓谷の河原にルリモンアゲハ、ツマベニチョウを見る。ツマベニの方は無視して、ルリモンアゲハの新鮮個体に的を絞り、静止画、動画とじっくり時間をかけて撮影する。路上で吸水していたのは、モンキアゲハ、クロアゲハ(台湾産は尾はありません)、イシガケチョウ、ヒメウラナミシジミと言ったところ。道をどんどん進んでいくと民家の庭先でたむろする初老3人がお茶を飲んでいた。お茶を飲め飲め、と勧められるがまま、一杯いただいたところ、これがすこぶる美味!結局3杯もお代わりしてしまう。住人曰く、“前はもっとたくさんのチョウがいたが、最近は数が減った”、“時々網を持った日本人が来るよ”と仰っていた。明るい急流の川岸をツマベニチョウ、メスシロキチョウ、なんだか分からないシロチョウが渡っていく。午後2時撤収。

5/26(曇り時々晴れ、一時雨)

埔里からタクシーを一日チャーターし、未明の午前3時ホテル発で新竹縣の山奥に向かう。話は前後するが、実際に行き着いたところは山奥の山奥、そのまた奥の秘境と呼ぶのがぴったりするようなところだ。日本で似たような地形のある場所は思い浮かばないが、強いて挙げれば、岡山県北西部の草間や成羽辺りか。岡山県では、渓谷は急峻だが、上部はなだらかな台地が広がり、集落や大きな畑となっている。しかしここは違う。上部に台地はなく、急峻なまま標高が2000mを超えるまで渓谷が切り立っているのである。この急峻な地形のあちこちに集落があり人々が暮らしている。あとから聞いた話ではあるが、台湾の原住民はこのようなところで暮らしていたらしい。当然、谷幅が大きすぎて川のどん底以外橋はかかっていない。谷底から峰の近くまで、安全に車もすれ違えないような狭い道幅の車道が延々と続いている。谷底から上部まで約10km、かかる時間は3040分と言ったところか。これを何度も繰り返すのだ。

話を元へ戻す。朝3時、夜も明けやらぬ中、タクシー到着。異常とも思える元気のよいドライバーだ。年齢は70歳、(妻は68歳とのこと、どうでもよいが・・・)。今回の遠征の中でもっとも印象に残った一日。怒涛の一日が始まった。まず、今日訪ねるポイント案内をお願いした方と合流するため、高速道路を北へぶっ飛ばす!(ちなみに台湾の高速道路はすべて無料です)途中のパーキングでのトイレ休憩中、早くもドライバー殿(以降は孫さんと記述)の個性が爆発する。70歳とは思えないたくましい体形、孫さん曰く、要人警護(いわゆるボディーガード)の経験があり、今でもトレーニングを怠らないとのことと。腕立て伏せなどの生易しいものではなく、指立て伏せを実演、そのうちジャンプ指立て伏せまで見せてくれる。今でもカンフーを教えているとのこと。次第に興が乗ってきたらしく、暴漢に襲われたときにどう対処するか、我々相手に実技を交えて熱血指導を始める。安倍総理が襲われた件を例に挙げ、日本の要人警護がいかにまずいかの話に熱が入る。と突然、趣味の話へ飛ぶ。今凝っているのは投網(とあみ)で魚を捕ること。日本人にカンフーを教えたところ、お返しに投網のやり方を教わったとのこと。やおらタクシーの後部カーゴスペースに積んであった樽から投網を取り出し、パーキングの駐車場で実演を始める。それがまた扇状に開き、見事に決まる。我々としては“ブラボー!すばらしい”ともてはやす選択肢しか用意されていない。さらに趣味の話は続く。亀を飼うのが好きで自宅には何匹も飼っている・・・。トランペットが好きでCDも出している・・・。マジック(手品)はプロ級で・・・。おいおいどこまで続くのだ?延々と話は続くのだが、本当に驚く(心底、恐怖におののく)のは2時間後であった。朝6時、案内の方(台湾を代表するチョウ写真家、教師でもあるため、以降“先生”と表記する)と無事合流を果たす。先生と孫さんが何を話しているのか分からないが、打合せは結構長い時間続いた。たぶん、目的地やそこへ至るルートの確認であろう。30分市街地をごく普通に走った後、冒頭説明した山岳地帯に入る。先生も車の運転が自慢らしく、愛車の日産エクストレイルを飛ばす、飛ばす!孫さんも本職のドライバーとしてのプライドが許さないのか、対抗意識むき出しで我々の乗ったトヨタウィッシュのタクシーをぶっ飛ばす!こうして恐怖の山岳ラリーが始まってしまった。このように文字に起こしてしまえば簡単だが、実際に乗車している方としては、ジェットコースターに乗ったときのような恐怖の連続だ!対向車とのすれ違い時は特に怖い!ご自身は運転技量に自信を持っているのはよく理解できるが、対向車にその技量があるかどうかはわからないのに、このスピードはあり得ない!集落の通過時も道に寝そべっている犬を避け、猫をよけ、気が気ではない。途中、先生が道を間違えたらしく緊急停車。再び目的地の場所とルートを確認したようだが、あろうことか両者(両車)は別々の道を選択し、正反対の方向に走り始める。お互い相手より一刻も早く到着しようと、またしても恐怖のドライブが再開する。孫さんは「老師(先生のこと)には負けないよ!」とのたまう始末だ。渓谷を上ったり下ったり、ゆっくり走れば4時間かかるところを1時間40分で走り切ってしまった。目的地の手前で先生の運転するエクストレイルが前を走っているのを確認する。孫さん曰く「老師はどこかの道を直滑降してきたな」。帰りは別の恐怖体験をすることになるのだが、この時点では知る由もない。ぶっ飛ばした甲斐もあって午前8時前には目指すポイントに着く。ここからは本来のチョウの出遭いの記述となる。ここは地元の方には良く知られたポイントらしく、すでに10人近くがカメラを手にスタンバっている。(今回の遠征でネットを持った採集者には一度も出遭わず)皆の狙いは数日前から姿を見せ始めたゼフとオオムラサキとのこと。我々チョウ撮影のため日本から来たことなどを話したところ、快く仲間に入れてくれた。先生はここでは有名人らしく、先生の案内で来た我々を信用してくれたのかもしれない。そうこうしているうちにまず現れたのはアサクラアゲハ、アカメガシワの花に来ていたのはボロメスだったが、崖のセンダングサに来ていたのは破損のないメスであった。さっそく広角、望遠と撮影する。撮影中にそばに小さなチョウが止まっているのを確認。よく見ればシジミタテハだ(後に確認すればエサキシジミタテハのようだ)。この頃から今回の遠征で初めて太陽が顔を出す。遠くのポイントから何やら声が上がる。地元の方が仕掛けておいたトラップに何かやってきたようだ。吹き付けられたチョウ寄せスプレー液に来ていたのは、ヒオドシチョウ、シータテハに混じってオオムラサキが堂々たる体躯で汁を吸っている。きわめて新鮮なオス。よく見れば日本産と翅裏の文様が違っている。先生によれば、亜種レベルまで違っていて、台湾では大変珍しく、出遭うことは容易ではないとのこと。そいえば台湾では全面採集禁止となっていることを思い出した。別のポイントに陣取る仲間から声が上がる。皆大急ぎでゾロゾロ移動する。どうやらゼフが姿を見せたようだ。先生によれば、台湾では普通種のタイワンミドリシジミとのこと。数分後の別のミドリシジミが飛来する(カノミドリシジミと判明)、そのうちにタカサゴミドリシジミのメスもやってくる。何と豪勢なことだ!運よくカノミドリV字開翅、タイワンミドリの飛翔、タカサゴミドリの開翅を撮影する(3種ともクリソゼフィルスです)。またしても別のポイントから声がかかる。ややスレ個体ながらトラフシジミ夏型似のチョウ(のちにウスムラサキシジミと判明)がとまっていた。次々に現れる見たこともないようなチョウの数々!まさにワンダーランドだ!まだまだ感動の出遭いは続く。高所に咲くネムの花に来ていたのはオオベニモンアゲハ(尾状突起の先端中心部にベニモンがある)、建物の前をふらふら飛ぶのは埔里で撮影しそこなったタイワンアサギマダラだ。今回は満を持して撮影、見事成功する。センダングサの花で蜜を吸うシロチョウ?かと思ったら何と巨大なシジミ(のちにウスアオゴマダラシジミと判明)であった。ポイントの高所でテリを張るタナカカラスシジミ(シンガポールの青年が言及していたヤツ)、日本のカラスシジミにそっくり。ツツジの花に潜って蜜を吸うセセリ(先生はユイサンアカセセリと仰っていた)、尾状突起が2本あるアサギシジミ、日本と同じミスジチョウ、最後に現れたのはタイワンアカシジミ、ムラサキツバメ(日本と同種)、ホリシャキマダラセセリなど。そうそう、ひとつ忘れていた!オオムラサキを撮影中、突然飛来した大きな甲虫。前脚が長いのでてっきりテナガコガネかと思ったが、なにかちょっと違う。大きさは日本のカブトムシの矮小個体くらい。おまけに頭部に動かないハサミがあった。これは何?(のちにワリックツノハナムグリと判明)

撤収時間の午後1時半まで見たこともない種が次々現れる。後先逆になったが現地の状況を説明すれば、標高は1620m、木々に覆われ眼下は見渡せないが、斜面の角度は半端なし、上から見れば、垂直か!と見紛うばかりの急峻さ、落ちたらひとたまりもない、当たり前だが転落防止の柵やガードレールの類は一切ない。ポイントより高所は雲がかかり、どれだけ上まであるのか想像もつかない。これまで案内していただいた先生は用事があるようで一足先に帰られた。やれやれこれで帰りのカーチェースは免れた!孫さんも“帰りはゆっくり走るから心配しないで・・・”と殊勝なことを言う。さて帰り道。走り始めた頃はテレサテンを聞きながら、先刻の発言通り普通に走っていたのだが、30分もすると濃い霧が立ち込める。その濃さが尋常ではない!いわゆる視界数m(正確には視界1~2m)とはこの状況を言うのだろう。普通なら車を停車し、霧が晴れるのを待つべきなのに、孫さんは何食わぬ顔で走ろうとする。さすがにフロントガラス越しではよく前が見えないらしく、窓を開け、頭から乗り出して運転を続けるのだ。霧の中を対向車が現れたらどうするつもりなのか、乗っているこちらの方が冷や汗ものだ。たまたま後方から後続車が迫ると徐行、先に行くよう手招きして、前を譲る。前の車がブレーキを踏む際のテールランプを頼りに運転を続けるつもりらしい。霧がやや薄くなると、前を走る車のすぐ後につけ、あおり運転を始める。たまりかねた前の車は我々のタクシーに道を譲るのだ。再び霧が濃くなると、まったく同じことを繰り返す!加えて、朝も同じだったが、常時スマホをいじりながらの運転だ!我々に伝えたいことがあるとスマホの自動翻訳機能を使って、口頭の中国語を日本語表示へ変換し、我々に画面を見せようとする。視界数mのなかでこれをやられると生きた心地がしない。2時間後、恐怖の山道走行を終え、通常運転に戻る。埔里まで4時間かかったが、ホテルに着く前に自宅(?)に連れていかれ、飼っている亀を見るはめに!突然友人の腹具合が悪くなり、孫さんの自慢話を中断、“頼むからホテルに戻ってくれ”とお願いすることになり、何とか絶命することなくホテルにたどり着く。孫さん曰く“明日はどこへ行くんだ?どこへでも連れて行ってやるよ!”朝3時から夕刻5時半までの14時間半、うち車に乗っていたのは8時間。行き帰りの異なる恐怖体験、山奥でのオオムラサキや各種ゼフとの出遭い。楽しい撮影仲間との懇親、通常の一カ月分の出来事を1日に集約したような濃密な一日であった。タクシーチャーター料金:10000元(日本円で約5万円なり)。夜7時爆睡。

5/27(晴れのち曇り、のち豪雨、夕刻晴れ)

台北に比べ、今日の埔里の天気は良くないと判断し、急遽台北へ戻る決断へ。朝6時、台中に向けバスに乗車、台湾新幹線に乗り継ぎ、午前8時台北駅到着。ホテルへ荷物を預け、午前9時から撮影開始。場所は5日前に訪ねた地元のチョウ愛好者の私有地、今日も快く迎えていただく。5日前に訪ねた際とは活動しているチョウが違っている。あれほどたくさんいたルリシジミの仲間はパラパラとしかいない。多分1/10以下だ。ツシマウラボシシジミも少ない。今日の目的種であるオオルリモンアゲハは破損個体ながら元気に飛び回る姿を見せてくれた。新鮮個体も出てきたようだが、その場にいなかったため撮影チャンスを逃す。リュウキュウムラサキ、ウスコモンマダラ、コモンマダラ、ツマムラサキマダラは今日も数が多い。多いと言えばツマベニチョウ、産卵のため多くのメスが集まっていた。友人が種数を数えたところ30種を超えていたとのこと。残念ながらキシタアゲハはまだ羽化していない。オオルリモンアゲハの他、クロタテハモドキ、キミスジ、オオシロモンセセリ、タイワンジャコウアゲハ、ベニモンアゲハなどを撮影する。午前中でここの撮影は終了。LRTに乗るべく駅に向かって歩いていたところ、未舗装の道で何かタテハが活動している。注意して近寄れば、今日の出遭いを期待していたヒメフタオであった。タテハらしく、行動が素早いため数カットしか撮影できなかったが、うち1枚に飛翔シーンで捉えたカットがあり、満足!

駅手前の食堂で炒飯を注文、出てくるのを待っていたところ、外で何やら飛んでいる。“オナシアゲハだ!”カメラを片手に飛び出し、後を追う。このオナシ君、飛翔は速く、一カ所に留まることを期待できないため、飛翔で抑えるしかない!背景は隣の自動車整備工場の壁やら、電柱やら、人工物だらけだが、贅沢は言っておられない。ひたすら連写、しかしピント甘々を数カットしか獲得できなかった。次の目的地に向かって移動中、何やら空模様が怪しくなってくる。雨がぽつりぽつりと降り出したと思ったら、瞬く間に土砂降りに変わる。昨日までハードな行動がたたり、皆疲れているため、全員一致で本日の撮影は終了、ホテルに戻る。

5/28(終日雨)

撮影最終日、しかしながら朝から雨が降り続いている。天気予報では昼頃から曇りに変わると伝えているのを信じて、雨の中を出撃する。郊外の低山、4kmにも及ぶ長距離移動ゴンドラに乗り、標高300mまで上がる。小雨の中、まずはゴンドラ終点駅近くを散策。センダングサの葉にとまる新鮮なホリシャアカセセリを見る。降り続く雨と低温のため、微動だにしない。そぐそばに静止していたのはリラエアキミスジ、今回の遠征で初めて出遭った種。近づくと我々を警戒してか間欠開翅を始めた。斜面の茶畑にウラフチベニシジミを見る。新鮮なオスだが、4日前に新鮮個体を多数撮影しているため、今日は撮影に身が入らない。すぐそばで翅を開いていたのはヤエヤマイチモンジの新鮮なオス。そぼ降る雨の中の登山道を山頂目指して上っていく。地表は雨とコケと落ち葉でズルズル状態、よほど気を付けないと滑ってしまい危ないことこの上ない。登山道を上っていく途中、大きなオレンジ色のチョウが目の前を横切る。“ワモンチョウだ!”しかしあっという間に茂みに消えた、残念!苦労して登った頂上にいたのはウラキマダラヒカゲ。好天ならこのピークにいろいろなチョウが集まってくると聞いていたが、この天気では他に何もいない。いたのはキノボリトカゲ一匹。下山途中、ウスアオゴマダラシジミを見るが撮影チャンスなし。結局雨は止まず、午後3時撤収。これで今回の遠征におけるチョウ撮影は終了となる。

 

5/29(くもり)

9日間に及んだ遠征も今日が最終日。今日は撮影なしで移動のみ。MRTのラッシュアワーを避け、早朝から桃園空港に向かう。現地時間10:50発の予定が発着便混雑のため30分遅れて飛び立つ。台北付近は厚い雲に覆われていたが、東シナ海を北上するにつれ青空が広がる。読書を中断して、ふと外を見れば、眼下に鹿児島湾、そして噴煙を上げる桜島が見える。日南海岸、四国に入り宇和海、遠くに佐多岬半島も見える。高知市の南から物部川沿いに飛んでいく。ここはヒサマツミドリシジミ、キリシマミドリシジミが棲む世界だ。やがて徳島湾に入る。「四国三郎」吉野川から流れ出た水はここ数日の大雨の影響か、褐色に濁っていた。日本時間14:30関西空港到着。ベイシャトルにて神戸空港へ海上移動、空港駐車場に預けていたマイカーにて自宅着18:00。ここにすべての行動が終了する。


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